横浜の街が熱気に包まれる中、水の冷たさに震えながらも、鈴木慶子さんはガイドと息を合わせて泳ぎ、風を切ってバイクを駆け抜け、最後のランで力強くゴールへ――。パラトライアスロンは、ただの競技ではなく、選手とガイドの信頼と絆が試される舞台です。鈴木さんが繰り広げた挑戦と感動のレースの全貌を、ぜひご覧ください。
大会概要
大会名:ワールドトライアスロンパラシリーズ(2022/横浜)エイジパラトライアスロン
開催日:2022年5月15日(日)
開催地:神奈川県横浜市 山下公園周辺特設会場
競技:スイム750m(0.75km×1周)、バイク20km(6.7km×3周)、ラン5km(5km×1周)
TRI6とは?
パラトライアスロンのTRI6は、視覚に障がいのある選手のためのカテゴリーです。このカテゴリーの特徴は、選手が常にガイド(Guide)とともにレースへ挑むことです。
- スイム:選手とガイドがロープでつながり、息を合わせて同じリズムで泳ぐ
- バイク:2人乗りのタンデムバイクに乗り、ガイドが前、選手が後ろで走行する
- ラン:再びロープで並走し、声を掛け合いながら一緒にゴールを目指す
選手とガイドが息を合わせて進む姿は、強い信頼と絆が感じられる、TRI6ならではの大きな魅力です。
※現在は国際基準で 「PTVI」と呼ばれていますが、日本の大会や資料では「TRI6」という表記も残っています。
パラトライアスロンを始めたきっかけ
パラトライアスロンを始めたきっかけは、一言で言うと「エリート男子のバイク走行音に惚れた!」です。元々マラソンをやっていましたが、大会に出るたびに故障ばかりしていました。このままでは走れなくなってしまうと思い、もっと体を平均的に鍛えたいと思うようになりました。そんな時、トライアスロンをやっていた友達から「トライアスロンは楽しいから是非やって!」と誘われましたが、その頃はトライアスロンて???…と、トライアスロン競技自体をろくに分かっておらず、ましてや、パラトライアスロンがあるなんて知りませんでした。笑 なのでバイクも1人じゃ乗れないし、ましてや泳げないし…と、頭から無理と思っていて全く願中にありませんでした。
でも、ある横浜大会の日、たまたま会場近くを通りがかったので、ちょっと覗いてみるか…と、立ち止まって見掛けたのが、エリート男子のバイクパートでした。カッコ良さと迫力に一目で魅了され、その場から離れられなくなりました。そして何よりも、集団走とスピードから奏でるバイクの走行音に心を奪われたのです!そこからトライアスロンをやりたいと思うようになりました。そうは言っても泳げなかったので、知人のトライアスリートから、スイム指導をしてもらい、3年掛かりでトライアスロンができる体作りをし、今に至ります。
ガイドとの出会い
人と人との繋がりだと思います。トライアスロンのガイドは、マラソンのように、異性でもOKだったり、レース途中でガイドを変えたりが認められていません。3種目を同性で1人のガイドが全てやるので、ハードルが高く、なかなかガイド志願者が見つかりません。特にタンデムバイクをパイロットとして乗り熟すには、練習がかなり必要です。そんな状況の中でも、私はとても恵まれていて、エリートパラのガイド経験者や元エリート選手だったコーチ、そして現役エイジトップ選手などの豪華メンバーが、手の届くところにいらっしゃって、ガイドをお願いする事ができました。
2022年横浜大会へ向けての準備
レースレポート
- レース前
レース前はとても緊張します。そんな時はガイドとレースを楽しんでいる姿を想像して気持ちを落ち着かせます。一人じゃない。ガイドと二人でレースに臨めるのはとても心強いです!横浜大会のエイジパラの部は、朝一、7時15分のトップでのスタートです。トランジションオープンの6時に合わせ会場入りします。トランジションでバイクとランのセッティングをしているうちに、あっという間に召集が掛かります。スイムスタート前は、基本試泳は必須ですが、今回はあまりにも寒かったので、私は足をチャポチャポ濡らす程度で試泳はやりませんでした。
- スイム750m
ポンツーンに手を掛け、いよいよスイムスタート。今年の横浜の海は、波がかなりうねっていて、すごく泳ぎにくかったです。うねりのせいか、伴泳ロープが何度も抜けかけ、その度に引き上げながら泳ぎ、後はロープのつっぱり加減でガイドとの距離感を感じながら必死に泳ぎました。ブイを曲がる時や、スイムアップ時には、頭や肩をガイドが叩いて教えてくれます。


- トランジション
いつも時間が掛かり過ぎるトランジ。そこで今回初の試み。靴下は履かない…笑 今まで誰に何を言われようとも、靴擦れが怖くて靴下を履くのだけは、どんなに時間が掛かっても譲れませんでした。でも今回は意を決して素足で挑戦!確かに楽で早い。ビンディングもスムーズに嵌り、1.2.3…の合図でペダルを一緒に踏み込み、バイク順調にスタート。
- バイク20km
一番大好きなパート。唯一、ガイドと会話ができる(なんて事ない世間話)楽しいひと時。横浜のバイクコースはカーブの多いテクニカルコース。通称、ガイド泣かせのコース。確かにカーブの度に「右に曲がりまーす。左足下げて…1.2.3…はい!」「左に曲がりまーす。右足下げて…1.2.3…はい!」を何度も繰り返し大変だったと思います。水分を摂るタイミングも、直線の安定したコースに入ると「水分摂りましょう!」と指示を出してくれます。ガイドとの楽しいライドは、あっという間の20キロでした。
- ラン5km
ランコースもまたガイド泣かせ…汗 「右に90度、3時の方向」「9時、2時、11時…」のように時計の針の位置で曲がる方向を指示してくれます。これはすごく分かりやすいです。赤レンガ付近は足元が石畳で、凸凹している事も説明してくれます。私が苦しそうにしていると「顎引いて〜!大きく息吐いて〜!ふぅ〜!・・・そうそう!」と、リラックスできよう優しく声掛け♡ そして残り1キロを切って、「あと500メートル!300メートル!ラスト直線!ゴール見えてるよ!」の力強いガイドの声に合わせてラストスパート!



- フィニッシュ
ガッツポーズで歓喜のフィニッシュ!この瞬間こそが、ガイドと二人でやり遂げた最高の瞬間!ガイドへの感謝の気持ちが溢れてハグがやめられない…笑




今後の目標
パラトライアスロンを始めて、今年で5年目になりますが、昨年4月、ついにMyタンデムバイクを作りました。愛称は「オバジ号」。フランス語で「茄子」という意味です。笑 トライアスロンを始めた事で、友達の輪が凄く広がり、それによりたくさんの方々にサポートをして頂き、私はここまで成長して来れました。今後もマイペースでエンジョイレースで行くため、特に大きな目標はありませんが、これからもサポートして下さる皆様に感謝し、オバジ号と共にパラトライアスロンを目一杯楽しんで行きたいと思います。

おまけの写真
寒がる選手を優しく暖めてくれるガイド
まとめ
ガイドとともに踏み出し、たどり着いたゴール。その喜びと、支えてくださった皆さまへの感謝は、言葉にしきれません。この記事を読んで「挑戦してみたい」「もっと知りたい」と感じた方は、どうぞ気軽にご連絡ください。ひとりではなく仲間と共に――信頼と絆で挑む体験が、あなたを待っています。




